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 つぎのひ、ジップは やまに のぼりました。
ジップは つくしやまの ふもとに すんで いますが、
やまの うえまで のぼるのは はじめてです。
 てっぺんに、おおきな いえが ありました。
ここが くまの いえに ちがいありません。

でも、ジップは いえの まえを いったり きたり。
どうにも とびらを たたく ゆうきが でないのです。それに、
とびらは おおきくて、ジップには あけられそうに ありません。
「また あしたに しようかな…。」
 ジップが つぶやいた ときです。
とびらが あいて、くまが かおを だしました。
「やぁ、きのうの うさぎくんか。
さぁ、おはいりよ。」
くまは うれしそうに わらいました。
「いえ、きょうは、おれいに うかがったのです。」
 ジップは、つくしやまで とった このみと さかなを
あわてて さしだしました。
「いやあ、これは ありがたい。」
 おおよろこびする くまを みて、ジップは
おもいきって たのんで みました。
「こんなもので よろしければ いつでも 
おもちしますよ。それで あの…。
かわりに、ときどき ふもとの ほうを
みまわって もらえないでしょうか。」
 ジップは、おおかみが となりの やまから やってきて
こまって いる ことを はなしました。
「おやすい ごようだ! わたしの なまえは
トリ−。またおいで。」

 こうして、ジップは まいしゅう トリ−に たべものを とどけ、
トリーは まいにち ジップの いえの ちかくを ひとまわり
するように なりました。おかげで、おおかみは 
つくしやまに あらわれなく なりました。
 トリーは、ジップが くる たびに いいました。
「さあ、おはいり。
おいしい こうちゃを いれて あげよう。」
でも、ジップの へんじは いつも おなじです。
「いえいえ、またこんど。」
 いくら やさしいと いったって くまですもの。
いつ たべられて しまうか わかりません。
ジップは、トリーが おおかみを おいはらった ときの
ことばが わすれられなかったのです。