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医者もいいました。 「王様、どうやら、かぜではないようです。 かぜでないとなると、医者であるわたくしには、どうしていいものやら、 なおしかたが、わかりませぬ。」 王様は、家来に命令しました。 「医者をくびにして、かわりに、国じゅうでいちばんの知恵者をよぶように!」 国いちばんの、物知りでかしこい老人が、城によばれました。 老人は、若い王様の前に、ひざまずきました。 「王様、くしゃみの原因は、なにかの…かおり、だと思われます。 とてもいいにおいのするなにかが、王様の鼻をくすぐって いるのでございましょう。」 「なにか…とは、いったいなんなのだ?」 「それは、わかりませぬ。 王様にしかわからない、なにか…なのです。」 老人は、そう言い残すと、ほうびも受け取らずに帰っていきました。 王様は、おふれを出しました。 「今後いっさい、パンやクッキーを焼いてはいけない!ケーキもつくってはならぬ!」 国じゅうから、パンを焼く香ばしいにおいが消えました。 お菓子をつくる甘いかおりもなくなりました。 ところが、王様のくしゃみはおさまりません。 歯をみがいていると、――くしゅん! お茶をのんでいても、――くっしゃん、くしょん……。 城で音楽会をひらいても、聞こえるのは、王様のくしゃみばかり。 城の庭を散歩していた王様は、かぐわしいバラの花のかおりを かいだとたんに、またまた、――くっしゅん。 「国じゅうのバラの花を、一本残らずつみとるように!」 王様は、つぎつぎに命令しました。 「国じゅうのゆりの花をつみとるように!」 こうして、城の庭からも、街角からも、家々の窓辺からも 花がつみとられ、とうとう、花という花すべてがなくなりました。 それなのに……。 王様のくしゃみは、とまらないのです。 |