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 ある国で、きゅうに王様が亡くなり、王様には
跡継ぎの王子がいなかったので、王様のいちばんの
家来だった若い男が、新しく王様になりました。

 新しい王様は、思いました。
(王様は王様らしく、堂々としなければ……)
 でも、長いこと家来だったので、王様になったばかりでは
どうしていいのか、わかりません。

 新しい王様は、前の王様のことを思い出しました。
そして、家来に命令しました。
「王様の前では、必ずひざまずくように!」

 新しい王様は、メイドの娘たちに言いつけました。
「王様の食事には、この国でいちばんおいしいものを出すように!」
 新しい王様は、国じゅうにおふれを出しました。
「朝起きたらまず、『王様ばんざい!』と言うように!」

  そんなある日、王様は
―― くしゅん! と、くしゃみをしました。
―― くしゅん、くしゅん……くしゅん!
(かぜをひいたようだな…)
 王様は、すぐに医者をよびました。
くすりをのみ、部屋をあたためて、羽ぶとんにくるまりました。
―― くしゅん、くっしゅん…はーくしゅん!
 一日中、寝ていました。
―― くしゅん、…くしゃん、くしょん!
 くしゃみはとまりません。それどころか、ひどくなるばかりです。
王様は考えました。
(熱もないし、せきもでない。うーん、どうもかぜではないらしいぞ……)